赤い月 終


着物の袂を探ったうさぎが、あるモノを取り出した。

ソレは、バジュラ。

景時がいつも使っていた、バジュラ。

それを見た黒曜は鼻で笑った。


「なんだ? そりゃ。
坊主の法具など、どうするつもりだ?」


「僧の法具… その通りじゃ。
だが金剛杵(コンゴウショ)は元々、帝釈天の得物じゃ。」


うさぎはただ静かに微笑みながら、手の中のバジュラを弄んでいるだけ。
鬼気すら発していない。

だが黒曜は、彼女の精神がゆるゆると研ぎ澄まされていくのを感じていた。


「…
やめておけ。
何をしようと、おまえは俺には敵わない。」


「そうであろうか?
妾はもう、そなたの知る妾ではないぞ?」


さらに表情を険しくする黒曜。

口元を綻ばせたままのうさぎ。

一刻の猶予もない。

『うさちゃんを手荒に扱うコトは、この俺が許しマセン!』なんて割って入るバカも、もういない…