月夜は再び、鬼の庵で暮らし始めました。
けれどもそこに、鬼の姿はありませんでした。
月夜はもう普通の人。
坊やは紛れもなく普通の人。
もうこのようなことを繰り返さぬよう、鬼と共にあるべきではない。
鬼はそう判断し、月夜に庵を譲ったのでした。
だけど、愛が消えたわけではありません。
月夜が不自由しないよう、坊やが不自由しないよう、大量の土産を持って頻繁に庵に通っていました。
月夜が里に戻ったことは、たちまち近隣に広まりました。
子を産んで女盛りとなり、益々艶やかになった月夜。
子連れでも構わないからと、多くの男が彼女を嫁にと望みました。
けれど月夜は、どんな良い申し出にも首を縦に振りませんでした。
私は赤光。
もうあの方に愛されることはないだろう。
だけど、坊やは確かにあの方の御子。
心を取り戻したあの方は、いつの日か、坊やを迎えに来てくれるかも知れない…
月夜はまだ、男を信じていました。
男の誠を、信じていました。
いつか来るはずのその時まで、坊やを立派に育て上げなければ…
たおやかな中にも強さを秘めた月夜は、そう決意を固めていたのでした。
あぁ、廻る、廻る、運命の輪。
轟音を上げ、周囲を全て巻き込んで‥‥‥



