耐えきれなくなったのは、男のほうでした。
日々囁かれる讒言に、心を蝕まれ、愛を見失い、やがて月夜を恐れるようになりました。
いつか牙を剥くかも知れない。
いつか殺されるかも知れない。
もしかして、坊やも‥‥‥
もう月夜が何を言っても、男は聞きませんでした。
月夜からも、坊やからも、逃げ回りました。
知る者もいない都で、坊やとたった二人きり。
坊やを抱いて悲しそうに佇む月夜を見て、妻たちも、屋敷の者も、皆が嘲笑いました。
身の程知らずが、と嘲笑いました。
春の暖かい陽射しが都に届く頃、恐怖に支配された男は月夜に里帰りを命じました。
それは実質、追い返されたも同然でした。



