美しい月夜に一目で恋に落ちた男は、求愛を繰り返しました。
─愛しています、美しい人。
どうか、私と共に都へ来て欲
しい。
─いいえ、私は赤光。
貴い身分の方の元へなど行け
ません。
─そんなことは関係ない。
たとえ貴女が鬼そのものでも
私は貴女を愛しています。
最初は頑なに拒んでいた月夜でしたが、徐々に男の誠実な思いに心を開き…
男の怪我が治る頃、月夜の愛する白い野の花が咲き乱れる丘で二人は将来を誓い合いました。
男が都へ帰る日。
そして月夜が里を出て行く日。
男は鬼に言いました。
─必ず、月夜を幸せにします。
必ず、月夜を守り抜きます。
確かに不安はありました。
だけど鬼は男を信じました。
娘が愛した男を、信じました。
だから鬼は微笑みました。
─ゆくが良い。
さらなる幸せが、そなたらの
上にあるように。
かくて月夜は、遠い都に嫁いでいきました。



