赤い月 終


視線を落とした黒曜が、グラスの中身を一気に呷る。

ふ、と熱い息を吐いて景時に目をやると、彼は見るも無惨に悄気ていた。

垂れた耳と尻尾、『キューン』と書いた吹き出しが脳内補填されそうなその様子…


(単細胞っつーか、素直っつーか…
ほんと、面白ぇヤツ。)


黒曜は唇の端を歪めて笑いながら、景時の頭に手を置いた。


「別に、オメェらのコト言ってるワケじゃねーよ。
コレくらいで凹んでちゃ、この先は話せねーぞ?」


「や、大丈夫。聞く。
酒は、酔っ払いのホラ話にならない程度に、お願いシマス。」


視線を上げた景時の、強い眼差し。

腹を決めた男の顔。

認めてやってもいい。
コイツは信じるに足る人間だろう。

だが、ガキだ。

大人には、酒の勢いでもなきゃ語れねぇ過去ってのが、あるンだよ。