うさぎに弱音を吐いてしまったあの夜から。

ゆっくり。
時間をかけて。
断片的に。

でも、なにもかも全て。

景時は思い出していた。

いつも明るく、笑顔を絶さなかった母さん。

物静かで、穏やかに微笑みながら、母さんと幼い自分を見守っていた父さん。

深く考えると赤面してしまうほど、仲が良かった両親。

その両親と、楽しく過ごした子供の頃。

幸せな記憶。

そして、悲しい記憶も。

いつものように微笑みを浮かべたまま、父さんに喰われた母さん。

俺に背を向けて、母さんを喰らった父さん。

わけがわからず茫然と見上げる俺を振り返った父さんは、泣いていた。

その青い瞳は、深い悲しみと、もっと深い愛情に溢れていた。

慟哭と共に、父さんは俺の前で光になった。

恐いと思っていた夢は、恐いと思っていた記憶は、本当は悲しい記憶だった。

身を引き裂かれるほど悲しくて、心が打ち砕かれるほど辛くて、でも、俺が愛されていた証となる記憶‥‥‥