赤い月 終


盛大に溜め息を漏らした景時を放置して、うさぎは項垂れる小鞠の肩に手を添えた。


「のう、小鞠。
心配せずとも良いのじゃ。」


「そんなコト言ったって…
心配するよっっ!!」


小鞠は駄々をこねるように、首を左右に振った。

揺れる栗色の髪を、うさぎの白い手が撫でる。


「いや、心配はいらぬ。
妾の帰る場所は、此の地をおいて他にない。」


優しく、優しく…


「妾が姿を消したとしても、それはただの散歩に過ぎぬ。
そなたが案ずる事など、何もないのじゃ。」


宥めるように…


「ほんと…?」


目に涙を浮かべながらも顔を上げた小鞠に、うさぎは微笑みかけた。

彼女の声は、まるで魔法。
彼女の微笑は、まるで麻薬。

脳を麻痺させ、心を侵す。

そうか、何も心配することなんてないんだ。

今までと変わりない日常が続くんだ…