躊躇う秋時の応えを一蹴する、厳然とした物言い。
だがその高圧的な言葉とは裏腹に、うさぎは優美に微笑んでいた。
その笑顔に引き込まれるように口元を綻ばせ、また顔を曇らせて景時をチラリと見、自らの組んだ指に視線を落とす秋時。
さっきから、表情筋が忙しそうだ。
すっかり貫禄をなくした秋時を見て、うさぎは首を傾げて可笑しそうに笑う。
景時は‥‥‥
押し黙ったまま、ずっとうさぎだけを見ていた。
「何も、問題はなかろう?」
「…
いやー…
でも、失敗例が、って…
その… 人間が…」
「秋時。」
恐る恐る地雷原に踏み出した秋時を、うさぎが制した。
あの夜のことが夢だったかのように、穏やかに、柔らかく。