赤い月 終


 ソノ女ガ大切カ?
 己ノ身ヨリモ?


「ソーデス、その通りデス!
だからちょっと黙ってて!!」


怒鳴りながら着ていたTシャツの裾を破り、拳に巻きつける。

うふふ、うふふ、と繰り返す鏡に向かって、十度目の打撃を…


 己ノ身ガ ドウナロウトモ、
 女ガ助カル事ヲ望ムノダナ?


「だぁぁぁぁぁ!!
そー言ってンじゃねーか!!」


全っっ然、集中できねぇぇぇ!!

それでなくても、頭イカレそーで集中できねぇのに。

なんのイヤガラセなの?!

もう無視だ。
ほんとに無視だ。

コレ絶対、性悪鏡のイヤガラセだ。

頭をブルブル振った景時は、さっき不発に終わった十発目を再び繰り出そうとして…


「う?」


胸を押さえて蹲った。

躰の中に、ナニカが灯ったような温もりを感じる。

体感幻覚って、こーゆーの?

でも、イヤなカンジはしない。

あったかい。

あったか…