「あ、でも」


「ん?」


「出来たら出来たで、それは嬉しいけどな」


「そうね」


要の本心は、言葉の奥に隠されている。


斗賀を出産する際に、何度も流産しかかって


医師にも何度もきつく言われた。


2人目も流産し易い体質かもしれないから


2人目を望むなら、ちゃんと治療をするようにと。


だから、分かってる。


彼が気遣ってくれてるのだと。


表面上は『女性』としての私を気遣い、


内面的な部分では『妻』を労わってくれているのだと。


だからこそ、彼の気持ちが堪らなく嬉しくて。


この人のためなら、2人目も欲しいとさえ思えて。


いつの日か、まだ見ぬ我が子を抱ける日が訪れるなら


きっと今日のこの日を思い出すだろうから。


旅行先での離乳食は大変だけど、


どこの家族でも必ずは通るであろうそんな経験。


これもまた、いい思い出になるはずだから。



自宅へと帰宅すると、彼は仕事をすると書斎に籠った。


けれど、これも彼なりの優しさだと知っている。


静かに書斎のドアを開けると、


椅子の背もたれに背を預けて寝ている彼。


仕事疲れが溜まっているのに旅行までしてくれた事が何よりも嬉しい。


そんな彼にケープをかけて、そっと額に口づけを。


「ありがとう、私だけのマーマン(旦那様)