暫く無言のまま、杏花の様子を窺っていると
「かなっ……め、………ごめん……ね?」
「ん?………何が?」
「私………至らぬ……妻で」
「へ?」
「仕事でトラブルがあったと聞いて、居てもたってもいられず、オフィスに行ったの」
「は?オフィスに……って、社長室にか?」
「うん。『居ない』って解っていてもどうする事も出来なくて……」
杏花は自分の胸に手を当て、顔を歪ませた。
「……それで?」
「常務の秘書の方が『社長は席を外しております。ご存知ないのですか?』って」
「………あぁ」
「…………とても冷静にしていて、私、自分が恥ずかしかった」
「………」
「秘書の彼女があんなにも冷静なのに、妻である私が取り乱したりして」
「いや……それは……」
元々、常務秘書は異常が付くほどの冷徹人間だ。
まぁ、仕事はキッチリこなすし、
私情を一切持ち込まないから信頼はしているが。
「その時、彼女に言われたの」
「は?………何て?」



