杏花は無下に断る事もせず、
ゆっくりと俺の腕の中へやって来た。
すっかり冷たくなっている杏花の身体。
もっと早くに気付くべきだった。
ごめん………杏花。
俺は自分の体温で温めるかのように
彼女の身体を擦りながら、
優しく優しく抱きしめた。
すると、杏花もまた俺の背中に腕を回し
愛おしいほどに抱きついてくる。
「………杏花?」
「………」
杏花の様子が少し変だ。
普段ならこんなにもすんなりと流されない。
少なからず照れながら、少しぎこちないくらいに。
久しぶりだからそう感じるのか、
それとも、それほどに俺を求めているのか、
今の俺には彼女の心境は分からない。
ただ言える事は、彼女の様子が少し変だという事。
『甘えている』ではなく、『確かめている』……感じに。
俺は彼女の身体を離すように腕を緩めると
より一層強く抱きしめられた。
そんな彼女の様子にさすがの俺も気付く。
これは異常事態なんじゃないかと。



