「愛してるよ」
電話越しなのが惜しいくらい優しい声音でそっと囁く。
「ありがとう。………要?」
「ん?」
「私も………愛してます」
「ん」
お互いの周りに温かい柔らかな空気が纏う。
沢田が教えてくれたようにお互いがお互いを支え合い、
そして、自らが相手を深く想う心。
これがあるうちは決して揺るがないだろう。
甘い余韻を残して、杏花は斗賀に奪いとられた。
まぁ、仕方ない。
今だけは斗賀に杏花を貸してやる。
―――――マジで、今だけだからな。
そう心の中で呟き、俺は旅館へと戻った。
部屋の入口に沢田が立っていた。
「社長、こんな朝早くからどちらへ?」
「ちょっと散歩にな」
「………いい事、あったんですね?」
「へ?………何で解るんだ?」
「社長の事は何でもお見通しですから」
不敵に微笑む沢田を尻目に
「東京へ帰るぞ」
「はい」
俺らは気持ちの良い朝を迎えていた。



