今夜宿泊予定の旅館へ向かう車内で
「社長」
「ん?」
「その、これはお聞きして良いものか悩む所ではありますが…」
「ん、何だ、言ってみろ」
珍しく言葉を濁す沢田。
手配しておいたレンタカーの車内で
沢田が俺に何かを言おうとしている。
一瞬、言葉を飲み込んだ沢田はゆっくりと口を開いた。
「最近、奥様と距離を取られているのですか?」
「え?」
「少し前から、母も心配している様子ですし、今朝の社長の表情も決して良いものでは無かったので……」
「やはり、そう見えたか」
「…………はい」
沢田は小さな声でそう呟いた。
俺がしたくてそうしている訳ではない。
出来る事なら、24時間張り付いて居たいくらいだ。
だが、授乳疲れの杏花にこれ以上無理をさせたくない
………そう思ってした事で。



