すでにスーツから着替えが終わっている所をみると、
要が帰宅したのは、だいぶ前らしい。
そんな気配すら全く気付かず、
ぐっすりと寝てただんて……。
「杏花、座って?」
要がベッドへと私を促す。
私は応えるようにゆっくりと腰を下ろした。
「仕事は?用事は済ませて来たの?」
「ん、会食はして来たよ。相手方に急用が出来て、早めにお開きになったんだ」
「……そうなの」
「ぐっすり眠れたか?」
「うん、お陰様で」
要もベッドへと腰を下ろした。
ほんの少し身体が沈んだ瞬間、
ふわりと彼の香りが鼻腔を擽る。
そんな彼をじっと見据えると、
要はそっと指先を私の髪へ滑らせ
優しい手つきで梳き始めた。
「驚かせてごめんな?」
「……うん。でも、何で?」
「何でって……父親だから?」
「………それだけ?」



