それからの篠原の行動はいたって普通だった。
「会長、プリントの処理やりましたんで俺、もう帰りますね」
「槙君は今日も元気だねー」
園がのんびりとそんな事を言う。
あのキスから一週間。
俺達は本当に“普通”に過ごしていた。
篠原が俺の部屋にやって来る事は勿論、抱き付いて来たり、愚痴だって一切俺にはこぼさない。ただの先輩後輩の関係だ。
用事があればハイと笑顔で答えてくれるし、仕事に支障はない。
…だがな?
「ハイ!今日も元気な俺は律とラブラブしてくるので仕事終わったから先にあがります!では失礼します!」
――――完璧、極力俺と居ないように心掛けている。つまり俺は、避けられている。
いや…俺はコレを望んであんな事を言ったのは確かなのだが…何も傷ついた顔一つせず、むしろ毎日明るく楽しそうに過ごされたら…俺ってその程度だったのか、と地味に傷つく。
香川なら、槙はもっと違う反応をするのだろうな…


