下っ端君は叫び声というか悲鳴を上げながら逃げて行った。
本来なら、会長の針をうまく避けるよう誘導するぐらいの瞬発力が俺にはあった。ってかある。だって手引っ張るだけだし。
だけど、無理だった。
理由は簡単。
あまりの衝撃に放心していたから。
「かかかか…会長」
「どうした、槙?」
先ほどとは違い、とてもとても優しい声だった。いつもの会長の声だ。いや、いつもより数倍優しく聞こえる。それは先ほど会長の“負”の声を聴いてしまったからだろう。
「…さっき下っ端君が言ってたお、“俺らのアイドル”ってなんですか?」
「待ってろ。俺があいつの頭を割ってきて記憶なくしてなかったことにしてやるから」
「会長待って!それ犯罪ぃぃぃいい!!」
俺は慌てて会長に抱き付いて制止した。さっきのでも相当ヤバいのにもうやめてくれ!本当に俺の将来像見てるようで怖いんだ!


