「…俺は、笑わないですよ、先輩」
「…そっか。それなら槙君にはこんな話聞かせるべきじゃなかったね」
だから何で先輩は…
「俺、先輩は笑顔でも本当に笑っている時と悲しんでいる時、分かりますよ」
「…そんな人は、たとえ居たとしても少ないんだよ」
そうかもしれない。
だけど。
「先輩には居るじゃないですか。俺のほかに3人も」
「!」
「…先輩の事を心から理解してくれる人が傍に居てくれるなら、それで良いじゃないですか」
何故、先輩は自分を卑下してあえて溝を作ろうとするんだ。
「分からない奴はそれまでなんだ。そんな奴は放っておけばいい。そんな人、きっと先輩にとって長続きしない。――だから、長く続くと思う、続いている人とだけ大切にしたらどうですか?」
俺の言葉に先輩は顔に手を当て、ポツリと呟いた。
「…本当に僕ってバカだなぁ…言われて初めて気付くなんて…」
そう言う先輩の声はひどく、温かいような、恥ずかしいような、そんな印象を受ける声だった。


