そうしてまた俺は会長の部屋の前に戻ってきていた。
会長は基本登校するのが遅い。何故なら人の多い時間に登校すれば、騒がれるし、逆に早すぎても学校でずっと騒がれる羽目になるからだ。だからいつもぎりぎりに登校する。なんてったって騒がれるのが嫌で1年間以上地味男に変装してたぐらいだからな。
そして俺は深呼吸をし、ドアをノックしようとした瞬間だった。
「だから、知らないと言ってるだろ」
「使えねー…」
「あのな、言っておくが俺は仮にもお前の…」
ちょうど、ドアが開いて中から律と会長が出てきた。
もう1度繰り返す。
“律”と会長が出てきた。会長の部屋から。あの五重ロックのかかってる会長の部屋からだぞ?
「…槙…」
会長は驚いたように目を見開いている。律は黙って俺を見つめているだけ。
「…そういう事だったんですか…」
俺は回れ右をしてまたもや走り去る。今日は走ってばっかだ。
だけど、そんなのはどうでも良かった。
まさか、律と会長が付き合っていたなんて…
俺はその衝撃にどこに向かうでもなく、足が動くままに走ったのだった。


