「おかえりー」
意外にも1番に玄関から顔を出したのは母親だった。…何だ、俺の杞憂だったのか。そう安心して、列からちょっと横にずれたその瞬間だった。
スカッ
ほとんど一列に並んでいたにも関わらず、わずかな俺の一歩の列による乱れを的確に狙い、俺の頬を何かがかすった。右頬を触ると、ベッチョリと赤い血が手に付いた。ギギギ…と首を回し飛来してきた物の正体を確認する。
家の塀に、包丁が突き刺さっていた。
「「………」」
さすがの2人も絶句である。きっとこんな歓迎のされ方は初めてなんだろう。
「さぁさ、上がって。槙、あんたに友達2人も居たの?そういう事は事前に言いなさい」
あれ?なんか、今のちょっとだけ地味に酷くね?
だがさすがは母親だ。2人の無言にも見事スルーだ。
「…迷惑でしたか?」
会長がシュンとした顔で母さんに尋ねる。こんな時でキラキラトーンは全く消えない。


