しまった!今日は天気予報によれば、一日中大雨に見舞われると言っていたではないか。

それに私、今日傘持参で登校してきたし。


「で、ですよねぇ」


あはは、と私は市ノ瀬くんに向かって苦しくも笑ってみせる。

しかし、市ノ瀬くんはそんな私のことなど気にもしないで、窓に写る雨模様を眺めている。


「………?」


こういった場合、無闇に声をかけられることを嫌う市ノ瀬くん。

自分の世界に浸っているであろう市ノ瀬くんの邪魔をしないよう、私はゆっくりと市ノ瀬くんの顔を覗き込んだ。

真っ黒な少し癖のある髪に、濁りのない真っ黒な瞳。

純日本人な人であれば、普通である容姿であるはずたが、私の目にはこれ以上ないほど市ノ瀬くんが輝いて見えた。


ほぅ…て、見惚れるように市ノ瀬くんを見つめていると、私の視線に気がついたのか、市ノ瀬くんはチラリと私の顔を見下ろした。

身長差がある私と市ノ瀬くんは、お互い見上げる見下ろすといった関係にある。

そんな市ノ瀬くんの見下ろした顔も素敵!とテンションも上がりかけた瞬間だった。


「ウザイ」


市ノ瀬くんのお顔が、これ以上ないほど不快そうに歪んだ。





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