「……あれ?」


元気よく市ノ瀬くんに挨拶をしたはずの私は、彼からも挨拶が返ってくると予想したのだけれど…。

「………」

あれ……。

市ノ瀬くんはすたすたと私の存在がないかのように、私の前を素通りしていってしまった。

しかし!

そんなことでめげてしまう私ではないのです!


「市ノ瀬くん、おはよ!今日もいい天気だね!」


めげることを知らない私は、通り過ぎてしまった市ノ瀬くんに追い付くために、彼の後を追いかける。

彼の隣からひょっこり顔を出し、私はにっこりと彼に向かって頬笑みかけた。


「………、……はぁ」


市ノ瀬くんの視線が私に向けられ、窓の外に向けられたかと思いきや、彼は疲れたようにため息をつき、やはり私の前を素通りしていってしまった。


「ちょ、ちょ、ちょっと!市ノ瀬くん!?」


私は弾かれたように市ノ瀬くんの後を追い掛ける。


「天気予報によれば、」

「え?」


市ノ瀬くんの後ろをついて歩く私を余所に、彼はピタリと歩を止めと、彼は廊下の窓に向かって口を開いた。

私は、呆然と市ノ瀬くんの横顔を見やる。


「降水確率はどの時間帯も80%」


誰に問いかけるわけではなく、

「その意味、わかるよね」


くるりと市ノ瀬くんが私の方に向き直ると、どうだと言うかのように窓の外を指差した。


彼の指差す先には、ザアザアと降りしきる雨模様が見えた。





*