「どういう髪型にする?」
「んー、ツインテール」
「………」
「冗談だから黙らないでよ」
私に似合わないのは自分でもわかってるから、と付け足しておいた。
入学式までは時間がある。
近くの公園のベンチに私が座り、
その後ろに秋がいて、
私の髪をしばってくれる。
昔から私の髪を弄るのは秋だ。
お母さんにしばってもらってた
ときもあるけど。
秋の手つきは優しく、
なんだか安心する。
と、
いきなり最近流行りの曲が
私の真後ろで流れた。
「秋、メール代わりに私がみようか」
「ああ。頼む。」
秋の携帯には 立川先輩
と表示されていた。
「立川先輩が、もう高校着いた?
だって。」
ほら、と後ろに携帯を渡すと
私の髪をといていた手は、
直様携帯にうつる。
何度も立川先輩になりたい。
そう思った。
「恋、髪、高校着いてからにするぞ」
立川先輩が、もう高校に着いたのかな。
「私やっぱり自分でくくってから
行くから、先行ってて!」
「そっか、わかった」
じゃあな、と言いのこして
秋は公園を去っていった。
秋の背中が見えなくなってくると、
だんだん視界が涙で滲んでくる。
もう何回泣いたかわからない。
優しい秋のせいで。
私は、
私はずっと秋が好きなんだ。
