「またメイク直し?」
放課後、掃除当番の友達は全部の机を教室の後ろへ寄せながら、呆れた表情をする。
「ちょっとだけ」
そう言って、油とり紙で鼻のてっぺんを拭くあたしは、机の上に置いたポーチからファンデーションを取り出した。
「帰るだけなのに」と言いながら、友達はあたしの机まで運んでいく。
彼女の名前は、森永郁美。
オシャレやメイクより美味しいお菓子の方が好きっていうタイプの女の子で、肩まである髪の毛も自然な黒。
「グロスやファンデはつけてるよ」って本人は言い張るけれど、あたしから見れば郁のメイクはスッピンと同じ。
だけど、可愛いんだ。
顔も小さいし、目も二重まぶた。
男子からも人気があるから、たまに羨ましく思うときもある。
「ニキビが出来やすいからイヤだ」と自分の肌を嫌がるけれど、あたしと違って郁はもとが良いから、ニキビが出来ていてもそこまで気にならない。



