ドサクサにまぎれて先輩に告白をしていたことよりも、ナナを傷つけたんじゃないかってことを気にするあたし。
「そっか。それなら、今度の日曜日に映画でもどうかな? あ、映画が嫌なら、別のものでもいいから」
安心した表情で、先輩は話を戻していく。
自分が乗り気じゃないことにも気づいていたけれど、あたしはその誘いを断ることが出来ず、うんと頷いてしまった。
待ち合わせ場所を話し合い、先輩は照れた口調で「ばいばい」と言いながら、この場を去っていく。
見送っているあたしは、先輩が見えなくなった後、後ろに振り向くことができなかった。
いるのかな、と考えながら立ち尽くす。
すると、案の定、背後でジャリっと砂を踏む音がした。



