「ちょっと前から……森永さんのこと、いいなぁって思ってて。明るいし、元気な子がタイプだから。……良かったら、一緒に映画でも観にいかない?」
洋介くんが言ってたことは、本当だった。
急いで走ってきた先輩は、途切れ途切れに話しながら、照れた表情で映画に誘ってくる。
いつもは爽やかだから、一瞬、違う人のように感じてしまった。
「駄目かな?」
返事を忘れていたあたしに、先輩はオドオドした態度で問いかけてくる。
「あ、駄目ってわけでは……」
その後の言葉が続かなかった。
ずっと憧れていた先輩から、こんな風に誘われるなんて夢のよう。
すごく嬉しいことだし、頑張って話しかけたりして良かったなって思ってる。
だけど、今のあたしは目の前にいる先輩よりも、追い出したナナがまだ近くにいるんじゃないかってことを気にしていた。



