朝香と佐奈は、「パーカー、洗ってから返すね」とナナに話しかけるあたしを見て、ニヤニヤしながら何かあったのかと聞いてくる。
「台風だったから、家まで送ってもらっただけだよ」って答えようとしたとき、朝練を終えた洋介くんが教室に入ってきた。
「お、おはよ!」
めずらしく、自分から声をかける朝香。
洋介くんもいつもとは違う雰囲気で、挨拶を返している。
良い感じの2人に驚きながらも、嬉しくなるあたし。
口元を緩めながら、佐奈と顔を合わせていると、朝香と話をしていた洋介くんが「そうそう」と言って、あたしの名前を呼ぶ。
「早坂先輩がさ……」
この言葉の続きを聞いたあたしは、時間が止まったかのようにかたまってしまった。
朝香も佐奈もすごく驚いていて、洋介くんは話の後、付け足すかのように「良かったな」と言ってきた。
あたしはゆっくり視線を移して、友達と遊んでいるはずのナナを見る。
「マジで言ってんの?」
少し離れた場所にいるくせに、友達の輪の中に入りながらも、ナナはしっかりこの話を聞いていた。
詳しい事情を聞こうと、洋介くんに詰め寄る彼。
その側で、朝香はぴょんぴょん飛び跳ねながら喜び、佐奈は満面の笑みで祝福してくれた。
ムキになって慌てるナナの横顔を見つめ、あたしは複雑な気持ちになっていく。



