「お! ちゃんと仲直りしてんじゃーん!」
友達と一緒に登校してきたナナが、微笑み合うあたしたちのところへ駆けつけてきた。
「心配かけてごめんねぇ」
2人はナナにも手を合わせて、ちゃんと謝っている。
大げさに怒ったふりをする彼は、困らせた後にケラケラ笑い、そしてあたしに「良かったな」と言ってきた。
「昨日、濡れなかった? あの後、雨が強くなったと思うんだけど……」
昨日、部屋の中から外を眺めて、あたしは傘を受け取らなかったナナを心配していた。
風邪を引いたんじゃないか、と思いながら問いかけると、ナナはあたしの頭に手を置いて、髪の毛をクシャクシャかき混ぜる。
「全然! 俺、足速いもん!」
そう言ってニコニコするナナが、気を遣わせないよう嘘をついたことに、あたしはちゃんと気づいている。
だって、髪を触られているとき、制服から微かに雨の匂いがしたから。



