何をしようとしているのか、全くわかっていなかったあたしは、目の前に差し出されたパーカーを見ても、首を傾げているだけだった。
「服、濡れてるから」
ナナは強引にパーカーをあたしの手に押し付けて、再度、上着を羽織っていく。
袖に腕を通す彼を見上げるあたしは、小さな声で「ありがとう」と呟いた。
普段はすごくうるさいくせに、こういうときは口数が減るんだなって思うと、自然に口元が緩んでしまう。
雨に濡れた制服を冷たく感じていたあたしは、ナナの優しさに甘えて、手にした服を広げていく。
よく見かけるやつだ、と思った。
崩した制服の着方をするナナは、グレーのパーカーがお気に入りのようで、1週間に3回はこれを着ている気がする。



