「売り切れー!?」
校内にある売店の自動販売機に向かって、叫ぶナナ。
ほぼ毎日、昼食に買ってきたパンを食べる彼は、ここのコーヒー牛乳をこよなく愛していて、それしか飲む気がないらしい。
ナナは点滅していないボタンを、無理だと知りつつも連打する。
1人でお弁当箱を広げていたあたしに、ナナは屋上で一緒に食べようと言ってきた。
多分、気を遣ってくれているのだと思う。
「もういいじゃん。他のにしなよ」
この時間、売店付近はやけに込んでいるから、あたしは後ろに誰かが並ぶんじゃないかと気にしていた。
「先輩!」
キョロキョロしていると、視界に早坂先輩の姿が映る。
少し離れていたけれど、見つけたことが嬉しくて、思わず大きな声で呼びかけてしまった。
「あ、こんにちわ」
先輩はにっこり微笑んで、側に来てくれる。



