「ちょっとぉ。ドサクサにまぎれて、あたしのカレーパン食べないでよ!」
むしゃむしゃと口を動かすナナに、すかさず文句を言う。
「間接キス」
そう言って、欠けた部分に口をつけるナナ。
彼はいつもの顔に戻ってた。
怒るあたしにまたあの表情を見せて、いたずらっぽく笑う。
落ち着いた空気は続かないんだな、と可笑しくなった。
だけど、一瞬だけでも見せてくれた姿は、あたしの不安をごっそり取り除いてくれて、一緒にいるのがナナで良かったなと思ってしまった。
だけど、朝香と佐奈の喧嘩は、次の日もまたその次の日も続いた。
「一体、どうしちゃったの? あいつら」
2人を遠くから眺めるあたしに、洋介くんが近づいてくる。
首を傾げて、わからないと答えるあたしは、完全に落ち込んでいた。



