カラフル


その後、あたしとナナは、学校から徒歩7~8分くらいの場所にある、恵比寿屋という店の中にいた。

古びた店内に流れるのは流行の曲ではなく、知らないおじさんの小話。

3テーブルしかなくて、客はあたしたちだけだった。

店主のおばさんは、レジの前で新聞を読んでいる。

ラジオの声と紙をめくる音だけが耳に入ってくる空間の中で、黙々とカレーパンを頬張るあたし。

「まずそうな顔して食うなよぉ」

目の前の席に腰掛けて、ジーッと見つめてくるナナは、不満げな表情でお茶を飲む。

「・・・ごめん」

カレーパンを皿の上に置き、あたしはしょんぼりした顔で謝る。

頭の中は、あの2人のことでいっぱいだった。

いつもみたいに、おいしいと言いながらガツガツ食べれる心境ではなかったの。