「ただいまぁ」
ナナと一緒に焼却炉から戻ってきたあたしは、教室で待ってくれていた朝香と佐奈に元気よく微笑みかける。
だけど、すぐにその笑顔は乾いてしまった。
帰ってきたあたしに振り返ることもなく、2人は無言で睨みあい、異様な空気が教室内に広がっていたからだ。
「・・・どうしたの?」と問いかけても、返事がない。
「何? 喧嘩してんの?」
隣にいたナナが、2人の姿を見て、思った言葉を口にする。
聞かなくても、これは確実に喧嘩だと思う。
普段から感情を表に出さない佐奈は、ひんやりした目つきで見下すかのように、朝香の顔を眺めている。
一方の朝香は、頭に血が上っていると言っても可笑しくないほどに、眉間にしわを寄せた恐い顔。
2人のこんな表情を見たことがなかったあたしは、教室のドア際で立ち尽くしたまま、一歩も前に進めなかった。



