「あ、森永さん」
後方から、聞き覚えのある声に呼びかけられた。
振り返ると、そこには青いジャージ姿の早坂先輩と、洋介くんが立っていた。
「こ、こんにちわ!」
乱れていたわけでもないけれど、思わず前髪を手で整えてしまうあたし。
側では、洋介くんがしゃがんでいるナナに、どうしたのかと問いかけている。
「ごみ捨て?」
「はい! 当番なんです!」
落ち着いた表情で話しかけられ、あたしは声が1トーン・・・、ううん、2トーンくらい上がっているかもしれない。
バスケ部の練習を見に行く朝香に付き添っているうちに、1ヶ月ほど前から後輩に優しく接している早坂先輩の存在を気にするようになった。
洋介くんに手伝ってもらって、話すところまでは進歩しているんだけど、緊張してうまく笑えない。



