「あー! 今、見とれてたっしょ?」
突然、振り返るから、あたしは慌てて違うところに目を向けた。
だけど、見ていたことがわかったみたいで、ナナはニヤニヤしてくる。
「見とれてません」
ときっぱり言い返しても。
「いーや! 今、恋してる目で、ジーッと俺のことを見てた! 惚れた? 俺に惚れちゃった? 惚れちゃったんでしょー?」
調子に乗ったナナはゴミ箱をグイグイ引っ張って、あたしの姿勢を崩してくる。
「もー、惚れてないってば! しつこいなぁ!」
大きな声で言い返すあたしは、仕返しにゴミ箱からパッと手を放していく。
「ってぇ!! ・・・弁慶に」
足にゴミ箱の角が当たり、その場にしゃがみ込むナナ。
ケラケラ笑いながら、あたしは手ぶらのまま焼却炉へ向かおうとした。
そのとき、だ。



