カラフル


「おっはよー」

洋介くんと別れて1人で教室に入ると、郁が手を振りながら声をかけてくる。

「おはよ」と返事をしながら、あたしは郁のそばにいる朝香に目を向けた。

自分の席で化粧品を広げながら、彼女は振り向かない。

いつもなら郁と同じように振り返って、話しかけてくるはずなのに。

変だなとは思ったけれど、その時のあたしはそんな彼女の態度を見ても、「機嫌が悪いのかな」としか思っていなかった。

なぜなら、その後は普通に話したり、一緒にご飯を食べたりしたから。

だけど、やっぱりいつもとは違っていた。

トイレに誘っても、「あたしはいい」と言ってそばにこようとしない。

鈍感な郁は気づいていないようだけど、中学時代から友人に対して疑いの目を持っていたあたしからすれば、何かに悩んでいるように見えて仕方がなかった。