なぜなら、さっきまで背中を撫でるので必死で気づかなかったが、

ツキトは特攻服を着ていた。

背中には、『輝夜蘭』と金色の刺繍。

蘭と狼がお互いを見つめ合うように刺繍されていた。

さらに、ベンチの後ろにはバイクがあった。

「あっあの…」

恐る恐るツキトに声をかける。

「ありがとうな。助かった」

そう言いバイクに跨がりエンジンをふかしたツキトは、

振り向きざまに自分の胸を2回トントンと叩き、私を指差し笑い走り去って行った。

少し呆然としていた私はさっきの出来事を全て思い返していた。

なぜ私は、あのときここへ来ようと思ったのか、

なぜ泣いてもいいと言ったのか、なぜ背中を撫でてしまったのか。

全てよくわからなかった。でも、ツキトを助けられたことには、違いない…きっと。

RURURURU…

「もしもし…綺輝?」

『うん?どうした?』

「あのね…」

中学生になって初めてできた友達、今は何でも相談できる親友の綺輝に電話した。

公園に行かなければならない気がしたこと。

男の人に出逢ったこと。

ツキトと言う人だということ。

特攻服を着ていたこと。

背中に『輝夜蘭』と刺繍していたこと。

全て話した。