始めの一歩。





……確かに、私は迷城塾に通ってるけど。



『でも、なんで知ってるの?』



すると、不思議がる私の表情で察したのか、彼が種明かしをしてくれた。



「前に、迷城塾のバッグ持ってた時あっただろ」


「あ……あー、なるほど」



納得した。


そういえば私、一回だけ迷城塾で会員全員に配られる『特製バッグ』で学校に行ったんだっけ。


でも。……あれ?


彼はなんで、そんな『一回』を覚えているんだろう?


……なんて考える暇もなく。



「……教えて欲しいんだけど、」



彼のよく通る声が、私の耳に届いた。


瞬時に固まった私。


ガチガチに緊張しながら、彼からの質問に答える形で休み時間は過ぎていく。


………その日、私が一日中幸せな気分だったのは言うまでもないだろう。