海賊王子ヒースコート


キャンディスが嫌味をこめて唾を吐きかけようとした時だった。

「ストップ」

第三者の声がした。

エリオットだ。

彼はニコニコしながらリチャードの首にナイフを突き付けた。

「猛毒を仕込んであるナイフだよ。即死したくなかったらキャンディスを放すんだ。今すぐ」

職業が医者だからか、エリオットは毒の扱いにも長けている。

その効き目の恐ろしさを知っているキャンディスは、刃が自分に向けられているわけでもないのにヒヤリとした。

「おおっと、こりゃ不利かな」

微かな緊張を声音に含ませて、ゆっくりとキャンディスの腕を放す少佐。

そのまま大人しく離れるかと思いきや…。

「っ…!」

エリオットの頬をナイフが掠った。

見ればリチャードもいつの間にかナイフを握っている。

「安心して。僕のには毒なんか塗ってないから」

「そうなんだ。勿体ないね。塗ってあれば殺せたのに」

笑顔でナイフを構える少佐に対し、エリオットも不敵に微笑み返した。