大きく伸びをしながら、トントンとゆっくり階段を下りる。
一階は閑散としており、娼婦達と客が戯れていた昨夜の騒がしさが嘘のようだ。
欠伸をしつつ近くの椅子にドカリと座ると、唯一この時間に起きている娼館の女主人マダム・オルガが箒を片手に話し掛けてきた。
「早いわね。まだ他の客はみんな寝てるよ」
「ああ~、なんか目ぇ覚めちまった。マダム、酒くんねぇ?」
「昨日もあんだけ飲んどいてアンタは…。うちの在庫切らすきかい?」
苦笑しつつもダリウスの座るテーブルに小さい酒ビンをドンと置く。
もう四十代になろうというのに若い頃と変わらず、マダム・オルガはハツラツとしていて美人だ。
そんな彼女の愛想のいい笑顔をボンヤリ見つめていた時だった。
「ふっ、当たりか」
音もなく店の扉が開いたかと思うと、聞き覚えのある低音ボイスが耳に届いた。
次の瞬間――。



