海賊王子ヒースコート



 娼館の二階にある個室で、ダリウスは浅い眠りから目を覚ました。

隣には昨夜買った女性が寝ている。

赤茶色の髪に青い瞳。

それらがキャンディスと同じだからという理由で衝動的に抱いてしまった。


「チクショー…」


本音を言えば、本命を抱きたい。

けれど大切な女はつくらないと心に決めたのだ。

自分は海賊だから。

今日を生きても、明日はどうなるかわからない身だから。


(キャンディス…)


好きだ、愛してると言ってしまおうかと何度思ったことか。

しかし、その度に彼の脳裏を過ぎるのは、処刑された父親タイタスの後を追うように自殺した母親の悲しい最期。


(言えねーよ…)


苦悩するようにガリガリと頭をかいて、ダリウスはベッドから起き上がった。

そして五分とかからずに身支度を済ませると、まだ寝ている女性をそのままに部屋を出た。