ありがたい気遣いにアイリーンが感謝を述べると、ヒースコートは少し躊躇ってから彼女の頬に手を伸ばした。

「アイリーン…」

「ヒースさん…?」

形は綺麗だけれど男らしい無骨な指に優しく撫でられて、ドキリとなる。

不意にアイリーンはヒースコートのことを「男」として意識した。

否、意識させられたのだろうか。

彼の指が頬を撫で唇をなぞり、顎をくすぐった。

そして――。


「あっ……ん…」


重ねられた唇。

絡め合う舌。

愛おしさをわからせるように深く激しく求められ、徐々に身体が熱くなる。


情熱に支配されたヒースコートの口づけはアイリーンの思考を甘く切なく蕩かした。







「…………お姉ちゃん」

物陰から聞こえた小さな小さな呟きは、波の音に掻き消されたのだった。