ミルフォード家は島の海沿いにあった。
伝統あるその大きな屋敷は眺めの最高な崖の端に建っている。
ようするに、アイリーンの部屋の窓から顔を出すとすぐ下は海といった具合なのだ。
「人の子として生まれ…愛を知った」
夕方、一人きりの室内。
パーティー用の上品なピンクのドレスに着替えたアイリーンは、昼間に歌っていた歌を再び口ずさんでいた。
「生きる喜びを知り…悲しみを知った」
深く印象に残っている部分だけ繰り返す。
この歌はアイリーンが小さい頃、ある男の子に教えてもらったものだ。
だから、うろ覚えで全部を歌えない。



