海賊王子ヒースコート



 穏やかな潮風が頬を撫でる。

アイリーンは甲板に出て来てヒースコートを探した。

ついさっきまで寄り掛かっていた船縁にいるだろうと思いきや、彼の姿は見当たらない。


(どちらにいらっしゃるのでしょうか?)


キョロキョロと辺りを見回していると…。


「アイリーン!」


遥か頭上からヒースコートの声がした。

「え?」

暗闇を見上げてみると、檣楼(ショウロウ)の上に立っているヒースコートの金髪が確認できた。

檣楼とはマストの上の方にある物見台のことで、見張り役はよくここへ上り高い位置から遠くを見渡す。


(ヒースさん!あんな高いところに…!)


マストの下まで来ておろおろするアイリーン。

するとヒースコートは暗闇の中、迷いなくマストを支えるロープ――シュラウドを伝いアイリーンのもとへ下りてきた。