命の危機を察知し、彼は慌てて話題を変えた。
「でもな~、まさかまさかのヴィンセント提督ご結婚から早数年。今回はギル。そろそろ僕にも春が来ますかね?」
アイリーンの兄、ヴィンセントが結婚したのは衝撃的だった。
職場でも彼の男色は広く知られていたため、まさか彼が可愛らしい女性と夫婦になるなんて誰も想像すらしなかったのだ。
「確かにあれは…不意打ちをくらった感じだったな」
ギルバートが呟く。
「ギルも大変でしたよね~。その素敵な上腕二頭筋が狙われてましたから」
「言うな…。思い出したくもない…」
クスクス笑うリチャードに、ギルバートは身震いした。
「にしても…おしとやかで汚れなき乙女のアイリーン嬢が、“あの”提督の妹だなんて。世の中間違ってますよね」
独身少佐の溜息まじりの一人嘆き。



