「っは、はぁっ、はあっ…」

走り続けて切れた息を整えながら入った裏路地の隙間に隠れる
遠くからする怒号を耳を澄ませて聞けばだんだんと遠ざかっていくのがわかる
あたりを見回してから隙間から出る
少しだけ軋む関節を見る
視界のモードを切り替えて異常がないかを確認する

チキ、と僅かに音が鳴り頭の中に機械音が響く
オイル切れだ
帰ったら継ぎ足さなくては
そんなことを考えてから、寂れたマンションの壁にもたれかかり、ずるずると地面に座り込む


透けるような銀髪にそれと相反するように瞳にはめ込まれた色は橙色
少女のような出で立ち、彼はアンドロイドだ
最も、そこには大量の感情遺伝子が含まれた、限りなく人間に近い存在ではあるが

その少年、戒は現在追われていた
世に言われるやのつく方々に
その理由は明確だ
彼らが受け取るはずだったクスリを横流しして自分の主へと送り
アタッシュケース2つ分の現金を奪って幹部を何人か色々な意味で太陽の下を歩けないような姿にしたからである

そろそろここからも移動しなくてはとぎりっと音を立てる足を持ち上げる


「お前なにしてんだ?」

その声に反応して上を見上げると
一人の青年がそこに立っていた