声にのせて


春斗は一人でちょうど教室を出ていくところで

汐里は小走りして春斗に追い付く

「ねぇ?」

春斗はちらっとついてきた汐里に目をやって

角を曲がる

「怒ってるの?」

不安そうに覗きこむ汐里が可愛すぎて

春斗は少し我慢できなくなったが

気持ちを押さえて階段を降りた

汐里が危なっかしそうに

階段を降りるものだから

思わず手を握ってしまった

驚く汐里の顔がより恥ずかしさを増して

「もう少し、ついてきて」

顔を見ずにぶっきらぼうに春斗は言った