声にのせて


「覚えてないですよね

あたし少し貧血起こして

しゃがんでたことあったんです」

昔話を話すように優しく語りかけた

「重いギター背負って、

ああ、もう部室いかなきゃいけないのにって」

そしたら、

と続ける心地いい音が響く

「あなたが声をかけてくれたんです」

フッと優しく笑うように俺をみた

「わ、大丈夫っ? ほ、保健室いかなきゃ

えっと立てる? そう慌てる夏川さんが」

あ、… ギター

「でもそのとき結構限界であたし歩けなくて

背負ってたギターをひょいっと奪うと

優しく手を出してくれたんです」