高校に入学して、俺達の会う時間は減った。
それくらいじゃ言い表せれないほどに、減った。
元々、俺の高校受験の基準は部活が盛んなところってとこがポイントで。
盛んだと、やっぱり練習も厳しい。
毎日の練習、休みの日は練習試合があったりして、日々くったくた。
そこに週2~3回、バイトまで始めたもんだから俺の疲れは、日々ピーク。
だから家に帰って真希が居ても、ろくに話もしねーで寝ちまったり。
休みの日のドタキャンなんて、いつものことで。
真希が怒るのも時間の問題だとは思っていたんだけど。
「でね……って、歩、聞いてるの!?」
そうキャンキャン声を出し怒ってる真希には申し訳ないけど……ねみぃ。
「……うん」
「じゃあ、いい? 本当にいいの?」
「……うん」
って、え。
な、何が?
「本当に!? やった♪ 歩、ぜーったいだからね!」
と、聞き返したかったけど……。
久々に見た真希の笑顔にボーッとしたまま、俺は頷いてしまった。
「じゃあ今日は帰るね! 歩、眠いのに煩くしちゃってごめんね! おやすみー」
そう静かにドアを閉めて行ってしまった真希。
その途端、俺はガバッと起き上がった。
ちょ、待て。
何だ、何の約束? したんだ、俺。
真希があんなに機嫌よく、しかも“おやすみ”なんて言って帰ることなんて今まであったか?
思い出せ、俺、思い出すんだ。
……駄目だ。
まじわかんねー……。
いくら考えても考えても浮かぶのは、真希のキャンキャン叫ぶ声だけで。
それが子守唄のようになっている今では、煩いとも思わず寝てしまうんだから。

