相変わらず……可愛くねー女。


いくら言い争っても、目の前には課題プリント3枚。

それは変わることのない事実。


早くやっちまわねーと、学校に泊まる事になっちまう。

そう思って、眺めたプリントの一問目から……読めねぇんですけど。


「……手伝ってあげよっか?」

「へ?」


今、言ったのって真希!?


キョロキョロ周りを見渡す俺に


「ふざけてんなら……帰るけど?」


そう低い声で、上から睨む真希様。


「嘘、嘘! まじで手伝って、大橋」


そう言うと、真希は俺の机に自分の机を寄せて静かに座った。


真希を“大橋”と呼ぶようになったのは中学に入って少ししてから。

名前で呼んだだけで妙な噂がたっちまって、それ以来人前では“大橋”って呼ぶようにしている。

それも今じゃ慣れたけど。


真希のお陰で進んでいく課題プリント。

勿論、俺にはチンプンカンプンで頭が痛くなって仕方ない。


「あー、頭痛てぇ……。ちょっと休憩」

「はぁ? また? 頑張ったの、最初の1枚だけじゃない」


そう呆れた顔で言う真希に


「俺、1年分の英語勉強した気分なんだけど」


そう笑うと、


「……笑ってる場合じゃないでしょうが」



真希は、やっぱり呆れた顔をする。


だけど、俺の休憩に付き合ってくれてる辺りは昔と変わらず優しい。